【リーダーシップを日常で活かす力⑤】感情的知性を活かすリーダーシップ


ラベンダー:花言葉「癒し」「献身」
『リーダーシップを日常で活かす力⑤ 』

これまでのシリーズでは、熱意を届けること、誠実な対話で信頼を育むこと、相手の気持ちに寄り添い共感を広げること、そして失敗を学びに変える姿勢をたどってきました。最終回のテーマは、それらを静かに束ねる「感情的知性(EQ)」です。EQとは、自分の感情に気づき整え、相手の感情を尊重しながら関わる力。香りで心を和らげるラベンダーの花言葉「癒し」「献身」「純粋な愛」は、まさにこの姿勢を映しています。

まずは自分の感情を整えるところから。忙しさの中で判断が荒くなりそうな時こそ、呼吸を一つ深く。いま自分は何を感じ、何を守ろうとしているのか——その名づけを静かに行うと、言葉はやわらぎ、表情に余裕が戻ります。感情を押し殺すのではなく、扱える状態に戻すこと。その落ち着きが、場の温度を下げ、伝わり方を整えます。

次に相手の感情を尊重すること。意見の対立が起きたら、結論を急ぐ前に「大切にしたい前提がどこにあるのか」を確かめましょう。相手の言葉だけでなく、間(ま)や視線、声の揺れにも耳を澄ます。そこには不安や責任感、期待が隠れています。「そう感じていたんですね」と一度受け止めるだけで、相手は安心して本音を出しやすくなります。**理解は同意ではありません。**相手の立場を理解したうえで、違いを丁寧に扱う——その姿勢が信頼を減らさず前へ進む道を開きます。

さらに関係を前進させるための問いを持ちましょう。
・この場で守りたい価値は何でしょう。品質でしょうか、スピードでしょうか。
・もし一つ実験するとしたら、最小の一歩は何でしょう。期限はいつ、誰と検証しますか。
・相手が動きやすくなる「最初の助け」は何でしょう。情報整理か、優先順位の明確化か。
問いは相手を裁くためではなく、一緒に進むための灯りです。

EQを日常に根づかせる小さなルーティンも役に立ちます。会議の冒頭に一分だけ呼吸をそろえる。決定事項には「なぜ今それを選ぶのか」を一行で添える。議論が熱を帯びたら、解決策の前に「合意できている点」を先に確認する。どれも時間は取りませんが、関係の温度を守り、意思決定の質を安定させます。

ラベンダーの穏やかな紫を思い浮かべてください。香りは主張しすぎず、ただ場を整えてくれます。EQも同じです。相手を動かすための強い力ではなく、相手を尊重しながら進めるための静かな力。理解された実感が生まれたとき、人は自ら動き始めます。私たちが目指すのは、速さだけに頼らず、安心して挑戦できる土台を育てるリーダーシップです。

シリーズを締めくくる今、どうか焦らず、自分のリズムで。うまくいかない日も、言葉が足りなかった瞬間も、学びへと変えられます。ラベンダーの花言葉が示すように、癒しと献身を携えて、今日の一歩を静かに整えていきましょう。あなたの落ち着いたまなざしは、きっと誰かの勇気になります。

■ 次シリーズ予告案
「言葉で場を整える:リーダーのためのフレーズと所作」をお伝えしようと考えています。
今回のシリーズは「心の在り方・感じ方」に焦点を当てていました。
次シリーズは、それらを具体的な言葉・表情・所作として現場でどう活かすかをテーマにして考えたいと思います。
どうぞお楽しみに。

最後までお読みいただきありがとうございました。